本の感想「異形の山」樋口明雄

本の感想「異形の山」樋口明雄(徳間文庫)2021_09

 南アルプス山岳救助隊K-9のシリーズの文庫書き下ろし。冬の北岳で閉鎖中の山小屋に何者かの侵入の痕跡があり保存してあった食料が食い荒らされていた。人間の仕業には思えない状況だった。その後、山岳カメラマンが得体のしれない動物を撮影した。大型のサルのように見える。「雪男」の出現かと騒動になる。関連するらしい被害の報告が相次いで、山岳救助隊も警戒にあたる。地元のハンターの協力も得て謎の動物の捜索が始まった。同時に大学生のユーチューバーが入山禁止のエリアに単独で入った。動画配信でヒットを狙う目的だった。動物の正体は全く思いがけない人物からの情報で明らかになる。そして中国とロシアとが絡むある犯罪も浮かび上がってきた。

 かなり荒唐無稽な設定であるが、ストーリーはたたみかけるような展開で楽しめる。冬山の厳しさも迫力のある描写で臨場感がある。