本の感想「雫の街」乃南アサ

本の感想「雫の街」乃南アサ(新潮社)

 これはシリーズものの2作目になっている。前作は「家裁調査官・庵原かのん」。主人公が家裁調査官としての仕事を通して、様々な人間模様と対峙する。この本には7つのケースが収められている。例えば、失踪宣告、離婚、遺産相続、子供との面会申し立て、など、家裁が扱う様々な争議を題材にしている。なかなか思いつかないような事件だけれども、こういうことが起きたら法律的な判断はどうなるのだろうと興味深いストーリーが展開する。そして家裁がそれぞれのケースを解決したとしても、それは司法行政としてのひとつの答えでしかない。当事者の抱える問題は双方にとって100%収まりのいい終結をみることはないだろう。調査官らの職務はいかにして争議をできるだけソフトランディングさせるかということだ。本作はノンフィクションではないが、作者が参考にした事例はあったのかもしれない。普通の生活者の視野に入らないところで様々な人間ドラマがあるものなのだろう。