本の感想「空にピース」藤岡陽子

本の感想「空にピース」藤岡陽子(幻冬舎

 このところ教員の働き方改革が以前と比べてぼちぼちと注目されるようになってきたように思う。そのことで最も顕著な変化と言えば、教員志望の人数が減っていることだとだから行政の無策ぶりには目も当てられない。自民党の萩生田氏などの認識は全く見当違いである。給与の一律4%増を定額の残業代にしていることも問題なのだが、これを10%に引き上げることが問題の解決ではない。本来業務以外の仕事を無定量に取り組まざるをえない現状を改めること以外に抜本改革はあり得ない。当然のことながら残業代を引き上げたからもっと働かせられるようになるということにはならない。

 この作品の主人公は就職して5年になる小学校教諭である。様々な問題に献身的に取り組む様子が描かれる。例えば、DVやにネグレクトなど家庭内での問題であったり、クラス内で様々な問題行動を起こす生徒への指導だったりする。さらには、日本語を十分に理解できない生徒やその保護者との対応などもやっている。職場の管理職や行政からの支援はほとんど得られていない。さらに、以前この学校に勤務経験がある教員が殺害されるという事件が起こり、その影響がじわじわと迫ってくる。

 現実の職場ではここまで輻輳的にトラブルが重なることはあまりないと思うが、実際にはおそらく教員の目が届かないところでの様々な事柄が解決の手口もなく放置されているものなのだろう。そういうことを可視化するところから取り組まなければならないわけだから、これは学校だけで何とかできることではない。社会全体で解決していかねばならない。