本の感想「いつまでも白い羽根」藤岡陽子

本の感想「いつまでも白い羽根」藤岡陽子(光文社)

 作者は大学卒業後に新聞社に就職し、その後、海外留学をした。帰国してからは看護学校に入学して看護師になった経歴を持つ。この小説は看護学校で学ぶ学生たちの日常を描いている。作者の経験が反映された部分が少なくないのだろう。

 看護師は人の生き死にに近接に関わる仕事である。現場では常に冷静な行動が求められ感情が揺れ動くことは多くの場合よしとされない。そういうマインドセットを生徒に植え付けるためには、養成機関では上意下達が重要視される。そのことでアカデミック・ハラスメントが起きやすくなる土壌がある。実際に、2年ぐらい前だったか、道南のある看護学校でそういった問題が発覚した。発覚する前にも同じようなことが継続的に起こっていたことは少なからずあったのだろう。

 主人公は大学受験に失敗して、滑り止めで受験した看護学校に入学した。再受験も捨てきれず受験勉強も続けていたが、仲の良いクラスメートもできて看護の学習に次第に集中するようになる。学業は座学も実習もハードであり、様々な理由で入学時の人数のおよそ4割は途中で学校を去る。それぞれの学生が様々な悩みや葛藤を持ちながら日々を過ごしてきながら、成績トップの学生が抱えているある過去の出来事がミステリーの要素を絡めてくる。

 明るく希望に満ちただけの学生生活ではないが、自分の心を裏切らずに生きたいという主人公と友人たちの意思には共感し敬服した。