本の感想「ツナグ」辻村深月

本の感想「ツナグ」辻村深月(新潮社)

 主人公は死者と生者を「ツナグ」役割を担っている。両者の意向が合えば一晩だけ亡くなった人があたかも生きていた時と同じようにホテルの一室に現れる。こういった荒唐無稽の仕掛けがこの作品の主要な設定になっているとあらかじめ分かっていたらこの本を手に取ることはなかった。死者との面会ということを小さな抵抗感で読ませるのにはよほどうまく物語を作らないと失敗してしまうものだ。

 5つのエビソードが入っている。出来不出来の差がわり大きいように思えた。あえて死者との面会を控えた4つめのエピソードが一番よかった。「ツナガナイ」の方がよかったというのは書名に反してしまうけれども。