本の感想「プーチンの10年戦争」池上彰・佐藤優

本の感想「プーチンの10年戦争」池上彰佐藤優東京堂出版

 プーチン大統領の演説を池上氏と佐藤氏が読み解く対談で、かなり専門的なレベルである。二人の博覧強記が容赦なく見解を披瀝し合うので、読者を選ぶ本だと思われた。私にはいささか難解すぎた。巻末に資料としてプーチン大統領とゼレンスキー大統領の演説が収録されていて150頁あまりの分量があるが、さすがにこれは読む気になれなかった。

 10年戦争としている所以は戦争の終結が見通せないことで長期化は避けられないと見通すからだ。プーチンの寿命が尽きるまで、もしくは高齢その他の理由で現職を退くまで、ということ。池上氏、佐藤氏が提言しているのは、通常のニュース報道では見えてこないロシアとウクライナとの内実や歴史的な経緯を深く知ることだ。両国の主張にもそれぞれの「事情」がある。国連などの機関や第3国が停戦に有効な手段を講じることができないことも問題だが、これが常態化していくとロシアを有利にすることに繋がっていく。プーチンの引退待ちというだけではいかにも希望がなさすぎる。