本の感想「新・地図のない旅III」五木寛之

本の感想「新・地図のない旅III」五木寛之平凡社

 シリーズの最終巻となるエッセイ集で、北国新聞富山新聞の2紙を基点として全国の地方紙に連載したものを収録している。五木氏は月に1回、NHKの「ラジオ深夜便」でお話をされているが、このエッセイは聞き心地のいいラジオのトークの趣がある。日々こんなことをしているとか、昔の思い出話とか、楽しんで実行する養生法とか飾らないおしゃべりだ。拝聴して面白いし、安心して聞くことができる。

 雑学も得ることができる。「天無人」というのはお寺さんで使われる隠語だそうだ。「天」の漢字から「人」の部分を抜く(無しにすると)「二」が残るので「二」の意味になる。同様に、「天無大」だと「一」だし、「鳩無鳥」が「九」、「吾無口」は「五」である。

 新聞連載を終了したことでこのシリーズが刊行されたのだが、こういうエッセイはいつでも心地よいものだ。またどこかの新聞や雑誌での連載が始まるのを期待したい。