本の感想「地球の細道」安西水丸

本の感想「地球の細道」安西水丸(A.D.A.EDITA Tokyo)

 読み始めて直ぐに再読だと気が付いた。著者が亡くなったのは2014年5月で、この本の出版は同年の8月になっている。おそらく、その頃に書評が出てこの本を知ったのではなかったかと思われる。だから10年ぐらい前に読んでいたのかもしれない。

 著者が国内外のあちらこちらを訪ねて書いた紀行エッセイを集めたもので全部で92タイトルある。国内と国外とほぼ半々の割合になっている。行きたいと思ったところへ実に身軽に旅立っていく。例えば、ある時、無性にポルトガルへ行きたくなり、成田空港へ向かう。空港で冷静に考えてみると行き先はいかにも遠い。フライトボードにはカラチ行きのパキスタン航空の便が表示されていた。カウンターで訊くと入国にはビザが必要とのこと。旅をあきらめて帰ろうとしたところで偶然であった著者のファンに声を掛けられた。その3人連れは仕事でクアラルンプールへ飛ぶところだった。それで一緒に行くことになった。というようなこともある。融通無碍である。エッセイにはその土地に所縁のある歴史上の人物について語られているケースが多く、綿密な取材がなされている。また、イラストが数点ずつ添えてあるのは当然のこと。