本の感想「忘れないでおくこと 随筆集 あたなの暮らしを教えてください 2」

本の感想「忘れないでおくこと 随筆集 あたなの暮らしを教えてください 2」(暮しの手帖社

 このシリーズ4巻のうち2巻目で、日々の気付きにまつわる話として67名のエッセイを収める。興味深い内容だったのはブレイディ・みかこ氏のもので英国の夫婦別姓の現状を紹介している。名字が2つある子供が少なくない。ジョン・グリーン=ウイリアムズなどのように「=」で両親の名字を繋げていることがある。そういう名前を持つ二人が結婚すると、例えばグリーン=ウイリアムズ=ロビンソン=ブルーム などの長い名字になることもあり得る。また、英国では出生届を出すときに名字も親が名付けることができ、両親の名字のどちらでもない新規の名字を付けてもよいことになっている。日本語で例えれば鈴木さんと佐藤さんとの間に生まれた子供に星野さんという名字を与えてもよいということ。英国の実態ではこういうケースはレアであり、親子で姓が異なることでパスポート取得、病院や学校への登録などで面倒になるからだ。すると鈴木さんと佐藤さんの例で言うと、鈴藤さんとか佐木さんのように複合型の新たな名字を作ることもあり、両親もその姓に改姓して親子で同じ苗字に揃えるというのがよくあるパターンだそうだ。あれこれ工夫してよりよい解決策を模索していく態度は立派なものだと思う。ちなみにこのエッセイは2018年5月に掲載された。日本では未だに選択的夫婦別姓に反対する人たちがいる。国会議員の中では自民党の一部がその手合いだ。今ではとうとう経団連も選択的夫婦別姓制に積極的になっている。この制度が整えば誰も不幸にはならない。より幸福になれる人たちが少なからずいる。制度に反対している狭隘な思想を持つ議員たちはその根拠として「伝統的な家族観が壊れる」と言う。伝統的家族観は時代の変容とともに可変性があるのは自明であり、そのために法整備をする必要がある。議員とはlawmakerであって、viewmakerではない。特定の価値観を作ったり維持したりする職責はない。