本の感想「東京ハイダウェイ」古内一絵(集英社)
東京のある会社に勤務する人たちがそれぞれが抱えている困難をどうやって克服していくのかをテーマにした6編の短編を収める。連作になっていて登場人物は各ストーリーで共通している。第1話は慢性的な睡眠障害に悩み、会社でも自分の働きを十分に評価されていない若者の話。第2話は第1話の直接の上司の女性についての話で、子育ての悩みが絡んでくる。それぞれのストーリーで主人公は主にメンタル面で何かが変わっていくという展開を持つ。6話ともコロナ禍の状況を組み入れてあって現実感を巧みに反映させている。会社でも学校でも家庭でも人々の暮らしの中では何らかの新しい気付きが起こる可能性があるものだろう。それぞれのエピソードにはこれから先に小さな光明が見えるようになっていて読後感は心地よかった。