本の感想「Timer」白石一文

本の感想「Timer」白石一文毎日新聞出版

 未来の日本が舞台になっている。この時代にはある科学的な発見によって、健康寿命を維持する特別な方法が開発されている。55歳までにその処置を受ければ90歳の誕生日前までは健康に生き続けることができるが、それ以上は生き続けることが出来ない。多くの人たちはこの処置を受けている。主人公は共に結婚相手を失った経験をもつ再婚の夫妻で、妻が夫よりも7歳年上であり、妻はこの処置を受けており、夫は受けていない。姥捨て山にも通底するような仕組みが設定されていてストーリーはシリアスに展開していく。90歳になる日が近づくにつれて、この処置を無効化してより長く生きられないかと考える人もいて、「外し屋」と言われる非合法のビジネスを請け負っている者もいるらしいとの噂も無くならない。主人公の夫妻の妻の方の命の期限が近づくにあたり、この処置の秘密に迫ろうとして二人はある人を探すことを決意した。

 なかなか引き込まれるストーリーなのだが、結末が宙ぶらりんになっている気がした。残りページが少なくなっていくとあと少しでしっかりとしたラストになるのかと心配したのだが、その憂慮が概ね当たってしまったように思う。