本の感想「理不尽ゲーム」サーシャ・フィリペンコ 

本の感想「理不尽ゲーム」サーシャ・フィリペンコ 名倉有里 訳 (集英社

 ルカシェンコ長期独裁政権下のベラルーシが場面設定されている。必然的に社会派小説ということになり、政権批判が内包されているので、ベラルーシ国内ではこの作品は販売禁止であり、図書館でも閲覧できない。

 主人公はあるイベントに参加しようと会場に赴くがそこで事故に巻き込まれる。人々が狭い場所に密集しすぎたことで死傷者をともなる惨事となった。ちなみに、これは1999年にミンスクの地下鉄駅で実際に起こった事故(死者13人)を下敷きにしている。主人公は意識不明の重体になり、植物状態で回復の見込みはないと診断された。祖母は奇跡的な回復を信じて付き添うが、10年めに亡くなってしまう。その直後に意識を回復した主人公は社会復帰を果たす。10年の空白独裁を経ても政権にはほぼ変化がなく、家族や友人たちには10年の経過による変化があった。

 ストーリーにはしっかりとした流れがあり分かり易い。独裁政権下で生きていくことの理不尽さがくっきりと浮かび上がってくる。独裁政権では政権維持が第1目的であり、国民の生命や生活はないがしろにされる。という構造は必ずしもルカシェンコの専売特許ではない。そういった政治状況は日本にも散見される。それを阻止するには無関心であってはならないということ。不穏な動向に早く気が付いて警戒すること。