本の感想「養老先生、再び病院へ行く」養老孟司、中川恵一

本の感想「養老先生、再び病院へ行く」養老孟司、中川恵一(株式会社エクスナレッジ

 前著の「養老先生、病院へ行く」は養老氏が東大病院で中川氏の診療を受けて、心筋梗塞が見つかり入院加療した経緯を記した。そのあとどうなったかが本書である。病院機雷の養老氏はびょいんとはミニマムアクセスの方針を持っている。本当に必要な時だけを見極めてたまに東大病院にも行く。誰にでも真似できるロール・モデルではないものの、きちんとそういうことができるのであればそれに越したことはない。

 死生観についても二人は見解をしめしていて、中川氏は次のように述べている。「人間だけが死を恐れるのは、脳を進化させた結果だと私は思っています。ヒトは脳の基本構造をかえるのではなく、新しい部分を古い脳の構造に「建て増し」するようにして新しい脳を進化させてきました。(中略)古い脳しか持たない動物、例えば猫や犬が自分が死ぬことを恐れていないのは、脳が死を恐れるほど発達していな空です。(中略)本来、生き物の死は自然に属するものなのに、それを嫌う脳を生み出してしまったため、人間は自分が死ぬことに納得できなくなり、死に恐怖を感じるようになったのです。」

この中川氏の指摘は養老氏の死生観にも通じている。端的に言うと、「往生際のよさ」を心得る方がよいということ。癌などの治療でも末期治療の段階になれば、緩和ケアを重視するほうが患者に寄り添った方法になるし、そうすることで残り時間をできるだけその人らしさを担保したままで過ごすことを可能にする。

 「病気とは、人間の問題に自然が勝手に介入してくることである。(中略)病気と死はつきものだが、どちらも基本的には人力及び難しである。」と養老氏は語っている。ごもっとも。