本の感想「ホイッスル」藤岡陽子

本の感想「ホイッスル」藤岡陽子(光文社)

 老夫婦の離婚に関わる騒動を描く。長年生活を共にした夫婦の夫の方が突然家出した。妻が知らないうちに自宅の売却手続きもしてあったので、妻は住居を失うことになった。娘や親類の援助を得て生活を立て直していくが、夫は20歳以上も若い不倫相手の女性と結婚しようと企てていることが判明する。妻はその女性と裁判で争うことになる。生活のために清掃の仕事をし始めるが、ずっと専業主婦だったから組織に属して仕事をすることには当初不安を感じていた。それでも次第に社会で働くことを通して自分自身の視野を広げ、考え方も変えていく。

 夫の不倫相手の女性には指南役がいて、そもそも金目当てであった。夫はそのことに気づかないままに金づるにされていた。女性には夫と二人の息子がいるが、夫は金にも異性にもだらしなく、長男は無職で家計は看護師として働く女性が担っていた。女性が金銭に執着する理由もこういう家庭の状況にあった。

 様々な事情が複雑に交錯した人間模様で、ストーリーとしては面白みがあった。