本の感想「狐笛のかなた」

 本の感想「狐笛のかなた」上橋菜穂子新潮文庫

 人の心を読む力をもつ少女は集落のはずれに祖母と暮らしていた。ある時、森の中で子狐が数頭の猟犬に追われていたのを助けた。その子狐は負傷していた。正体は霊狐で特殊な能力を持ち人に変身して主人の命令に従い、人間界でスパイ活動や暗殺も請け負うのだが、命令に背けば命を奪われる宿命にある。

 物語は隣り合う2つの国の確執を描く。主人公の少女には母親の記憶がない。母親はある経緯で殺害されていたのだが、叔父のかけた暗示によりその記憶が封印されていた。祖母の死後その封印が解かれ、少女は2国の争いに巻き込まれていく。霊狐は遠くから少女を見守っていて、正体を明かさずに少女のピンチを救うことがあった。霊狐は主人に課せられた役割を果たすことが、少女を救うことと相反してしまうのに気付くことになる。

 作者の想像する異世界はいつも見事なものだ。ストーリーにはすっかり引き込まれてしまう。「守り人シリーズ」「鹿の王」など繰り返して読みたい作品だ。この作品も今回は再読だった。古本屋でたまたま見つけて¥110の安値で入手できた。