本の感想「恐怖の谷 シャーロックホームズ全集7」 アーサ・コナン・ドイル

本の感想「恐怖の谷 シャーロックホームズ全集7」 アーサ・コナン・ドイル 小林司東山あかね 訳 (河出書房新社

 シャーロックホームズのシリーズを読むのは初めてだった。たまたま図書館の新刊コーナーで見つけた。昔からの名作であるのでとりあえず一つは読んでみようと思った。1914年から1915年まで連載された作品だから、すでに100年以上も昔のものということになる。

 物語は1895年ごろの英国で起きた殺人事件から始まる。この時代は鉄道はあったが、自動車はなく馬車が利用されていた。そのぐらい昔のことだ。警察当局の捜査と並行してホームズの捜査も始まる。両者は基本的に協力関係にある。今の日本では民間と警察とがこういう合同捜査をすることはありえないだろう。トリックはホームズが解き明かしていくのだがこれはこのシリーズの「お約束」なのだろう。ホームズによる謎解きが終わってから、時が20年さかのぼったアメリカに舞台を移す。この炭鉱町で起こった出来事が英国の殺人事件の発端になっていたことが明かされる。

 想像以上に読み易かった。今と違って複雑なデジタル・デバイスなんかも出てこないし、トリックも素直だ。思いのほか楽しく読めた。この本で驚いたのは「注・解説」の量が多いことで、物語は273頁で終わり、「注・解説」が終わるのは469頁(訳者あとがき含む)となっている。ホームズファンにとってはこういうところも読みごたえのあるところなのだろう。私は読まなかったが。