本の感想「七四(ナナヨン)」神家正成

本の感想「七四(ナナヨン)」神家正成(宝島社)

 先に読んだ宮部みゆき氏の書評集から選んだ本だが、読み始めて直ぐにかつて読んだことがあることに気付いた。出版は2016年なので読んでから7~8年ほど経っていると思われる。所々、場面を覚えていたが全体の流れは忘れていた。

 主人公は陸上自衛隊で中央警務隊に所属する。自衛隊内の犯罪捜査や被疑者の逮捕を行う仕事である。七四式戦車内である隊員が自死したように見える事件を担当した。自死であることが明確になれば捜査はそれで終了になるが、主人公はいくつかの疑問点を発見する。しかし上司は自死であることを報告書にまとめて捜査を終わらせようと圧力をかけてきた。そのこと自体にも不審を感じて、単独で捜査を継続した。すると、思いがけない人物とのつながりができた。戦車のためのプログラムを作成した会社の社長であるその人物とは阪神大震災の時にまだ幼かった主人公と会っていたと気付いた。

 物語は自死とみなされた隊員と同期の仲間たちとの経緯を解いていく。また、捜査を妨害する勢力とも対峙することになる。謎は自衛隊内部に留まらず、大きな闇組織が背後に連なっていることが分かっていく。

 なかなか凝った仕立てのストーリーで、全容を把握するのは結構大変だ。大まかな流れが分れば十分に楽しめるミステリーだ。作者は陸上自衛隊に所属していたことがあって、組織内の様々な実情に詳しい。ミリタリーファンならその点でも興味深く読めるものだろう。