本の感想「桜と日章」神家正成

本の感想「桜と日章」神家正成(宝島社文庫

 「七四(ナナヨン)」の続編にあたる。前作で主人公の上司だった人物が自衛隊から警察に出向していて柏警察署の副署長になっている。主人公はその副署長の直属の部下の副署長補佐である巡査部長。

 事件は千葉県警の警備部長が誘拐されたというもの。犯人の要求は公安警察の「自衛隊監視班」の全リストをWEB上で公開せよという。自衛隊公安警察との間にある何らかの事情が介在する。要求から推察すると犯人は自衛隊と関わりのある何者かである。自衛隊から出向中の副署長は微妙な立場になって、事件捜査から遠ざけられてしまう。しかしながら、自衛隊とのつながりを利用しながら独自に捜査を進めていく。次第に明らかになってくる事件の背景には予想もしなかった「仕掛け」が浮かび上がってくる。組織のためには個人の犠牲を方法論の一つとする勢力と、それを容認しない個人たちとの対立が呈示される。