本の感想「世にもあいまいなことばの秘密」川添愛

本の感想「世にもあいまいなことばの秘密」川添愛(ちくまプリマー文庫)

 「あいまいな」とは「多義的」ということ。どんな言語にも「あいまいさ」はある。「あいまいさ」を防ぐ表現を考えてみようという試みを実例を示しながら説明する本である。こういう分野は多分読者によって好き嫌いがはっきりと分かれそうな気がする。私はこのような分野は大好きな方だ。

 例えば、「頭が赤い魚を食べる猫」という表現は5つの解釈が可能だという。直ぐに思いつくのは (頭が赤い→魚)=「魚の頭が赤いということ」と(頭が赤い→猫)=「猫の頭が赤い」という2つだ。他にも3通りの解釈ができる。

 別の例は昨今のクマとの遭遇事故と関わる。「すぐに走って逃げてクマを興奮させない」の場合。「すぐに走って逃げる」のがいいのか、「すぐに走ってはいけない」のか両方の意味に解釈できる。反対のことを言っていることになるので適切な言いかえをする必要がある。

 言葉の持つ「あいまいさ」というのは表現の面白さに利用できることもあるし、単に排除するのがいいということにはならないし、完全になくすこともできない。「もし曖昧さがいっさいなかったら、私たちの言葉はきわめて味気ないものになるでしょう。」と述べている。