本の感想「何げなくて恋しい記憶 随筆集 あなたの暮らしを教えてください 1」

本の感想「何げなくて恋しい記憶 随筆集 あなたの暮らしを教えてください 1」(暮しの手帖社

 シリーズの1巻目で、家族、友人、恩師にまつわる70名の執筆者によるエッセイを収める。初出は2007年~2019年までの掲載からセレクションしてある。登場するのは作家やライターが多い。知らない人もいるので巻末の「著者紹介」を見ながら読んだ。

 俵万智氏が「マルハラ」(マルハラスメントの略で、SNSの対話で文末に句点を付けるとZ世代の人たちは不快感を抱くこと)をネタにして詠んだ短歌を先日読んだ。「優しさにひとつ気がつく ✕でなく〇で必ず終わる日本語」と表現して句点はハラスメントにならないことをZ世代に諭す。この本に収められたエッセイでは俵氏が大学生になって故郷を離れた時に感じたホームシックをこんなふうに表現した。「なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き」こちらも巧い。

 味わい深いエッセイ集である。シリーズ3巻目が未読なので読むのを楽しみにしている。