本の感想「生物から見た世界」ヤコブ・フォン・ユクスュル著/ゲオルク・クリサート絵 

本の感想「生物から見た世界」ヤコブ・フォン・ユクスュル著/ゲオルク・クリサート絵 (岩波文庫

 およそ90年前に書かれた本で、タイトルの通り色々な生物がどのように世界を見ているかを解き明かしたもの。最初の口絵にヒト、イヌ、ハエが見た部屋の模式図が描かれている。それぞれに見えているものは、それぞれが生きるために必要な視覚情報を認知していることが分かる。太陽光線のなかでどの波長を視覚認知できるかもそれぞれに異なる。トリは紫外線や地磁気も感知するが、紫外線は多分視覚情報の中で処理されるのだろうが、地磁気は視覚情報に反映されるのだろうか?

 モグラについて興味深い内容が記されている。地中で生活するモグラには視覚はない。自らの位置情報を定位することはできて、感覚情報として3Dの立体図を備えている。だからどの方向にどの距離だけ移動したかが3D的にマッピングできているという。ただ闇雲に地中のトンネルを移動しているのだはないのだ。

 こういった興味深い内容が紹介されているのだが、なにせ90年ほどの昔の知見である。それ以降の研究成果によって書き換えられていることもありそうだ。こういう分野の最新の状況も知りたい。