本の感想「ゲームの王国(上)(下)」小川哲

本の感想「ゲームの王国(上)(下)」小川哲(早川書房

 ポル・ポト時代と現代のカンボジアを描く大作。上巻はポル・ポト時代、下巻は現代の設定になっている。ポル・ポト時代の恐怖政治を生き抜いた主人公たちがおよそ半世紀経ってどう生きているかがストーリーの根幹をなす。相当入念に読んでいかないと全容を把握するのが難しい。何しろ登場人物が多く、それぞれの人物関係が入り組んでいる。巻頭に「登場人物リスト」があるので、何度も参照しなければならない。ということもあって読むのにはとても時間がかかった。上下巻合わせて750頁ほどでそれほど長いというわけではないが、改行が極端に少ないので総文字数は相当に多い。読みごたえがあるが、読みにくくもある。この作品は宮部みゆき氏の書評で知ったものだった。お気楽に楽しめるエンターテインメントではなくて、マニアックな読み手向きの作品だと思う。しっかりと読みこなすにはかなりの胆力がいる。

 主人公は2人いて、ポル・ポトの隠し子とされる女性と、天賦の知性を持つ神童との生涯を通じての絡み合いを描く。長じて、前者は有力な政治家となり、後者は学者となった。若い頃に離れ離れになって以来、途切れた繋がりは、後年になり思いがけない形で交錯する。