本の感想「先生、大型野獣がキャンパスに侵入しました!」小林朋道

本の感想「先生、大型野獣がキャンパスに侵入しました!」小林朋道(築地書館

 「先生、シリーズ」のおそらく7巻目だと思われる。期待通りに面白い。このシリーズには外れがない。ひとつだけ、エピソードを記す。

 イスラエルエルサレムヘブライ大学の研究グループによる説である。クモが近くにいると、ある種のバッタは食べ物に対する嗜好性を変える。その変化はストレスが原因で起こるのではないか、というもの。実験はこのようにして行われた。口を接着剤で貼り合わされて捕食できないようにされたクモと、バッタが一緒に野外のケージで飼育され、クモがいないケージで飼育されているバッタと比較された。その結果、クモと一緒に飼育されたバッタは、クモが居ない状態で飼育されたバッタより、炭水化物を多く含む餌をより好んで食べることが明らかになった。研究者たちはバッタはクモを見てストレスを感じ、エネルギー源になりやすい炭水化物をより多く摂取するようになったのではないか推察している。

 そもそも、どういう経緯でこの観察・実験が開始されたのかが興味深い。何の手がかりもなくいきなり思いつくようなことではないから、自然界でバッタとクモの両者を観察しているうちに、餌の嗜好性の違いがありそうだと気付いたのだろう。研究者たちの観察力に脱帽するしかない。