本の感想「幸せへのセンサー」吉本ばなな

本の感想「幸せへのセンサー」吉本ばなな幻冬舎

 吉本氏の本は今まで読んだことがなかった。たまたま新刊書のコーナーにあって短くてすぐに読めそうだと思って手に取った。内容は人生訓というか処世術といったもの。オーディオブックで配信されたと記してあるのだが、どういうことなのかよく分からない。ネット配信で聞けるようになっていたということなのだろうかと思う。だから、文体は極めて口語的である。どちらかと言うと若い人たちに向けて発信しているような内容に思われた。全くもっともなことしか書かれていないのだが、何かに悩んでいる若者が読めば、「こういう考えもあるのだ」と気づくことが少なくないのだろう。一つ例をあげると「今の若い人を見ていると、良くも悪くも、ゲーム世代だなと思います。何か考えるにしても、やるにしても、根っこにあるのは確実に枠が決まっているゲーム感覚なんだろうなと」。この言説には全く同感だった。世の中には「一般的な正解」があるかのように考えている若者が多いように思える。そしてみんながそれを目指すべきなのだと思わされているらしい。「個性が大切」とか「違った価値観を認め合う」と言いつつも、「多様な正解」よりも「一般的な正解」に重きが置かれているのではないだろうか。SNSなどで周囲と常時接続しているのが普通になってしまうと、こういう傾向に拍車がかかる。だからある程度は他者を遮断することが必要なのだと思う。