映画の感想「The Holdovers / ホールドオーバーズ」

映画の感想「The Holdovers / ホールドオーバーズ

 昨年末に「Perfect Days」を見て以来、ずっと映画館を訪ねる機会がなかったが、ようやく本作品で映画鑑賞した。舞台になっているのはボストンの近くにある全寮制の男子校である。1970年のクリスマス休暇が始まった。この2週間、生徒は家族と過ごすために帰省する。しかし、何らかの事情があって寄宿舎に居残りになってしまう生徒がいた。その生徒と監督任務にあたる教員、厨房管理者の女性、この3人が年明けまでの期間を一緒に過ごすことになった。生徒は家庭で複雑な事情があり、学業はそれなりだが素行と性格に難がある。教員は融通が利かず、生徒にも同僚にも疎んじられている。厨房管理者の女性はベトナム戦争で息子を亡くした悲しみから立ち直れていない。3人がかかえる心の中の解決できない部分が時に何らかの形となって表出すると、他の2人のどちらかがそれを受け止める。それまで打ち明けることのなかった心の内側を図らずも知り合うようになっていく。とりわけ互いに嫌悪しあっていた生徒と教員との間ではそれまでになかった新しい関係が築かれつつあった。やがて予想もしなかった出来事が起こる。

 よくありそうなテーマの学園ものという言い方をしてしまえばそれまでだけれども、本作品は演出も映像もほどよく抑制が利いていて見ていてストレスがない。気持ちよく最後のシーンまで鑑賞できる。多分、本作品は興行的には大ヒットではないと思われるが、平日の午後の上映でまずまずの客入りがあった。