本の感想「タマリンドの木」池澤夏樹

本の感想「タマリンドの木」池澤夏樹文藝春秋)1991_09刊

 先日、池澤氏の新刊本を読んでいて本書に言及があった。どんな内容だったか思い出せなくて再読した。前に読んだのはいつだったか分からないが、相当昔だったと思われる。読んでいて全くストーリーの記憶がなかった。

 オーソドックスな恋愛小説である。タイで難民支援の仕事をしている女性が一時帰国した。支援物資の調達をする中でディーゼルエンジンの提供をすることになった企業との接触をした。その縁で知り合ったエンジニアと互いに惹かれ合うようになった。女性は数日後にはタイに戻る。しばらくして男性は海外出があり、わざと遠回りしてタイに立ち寄る計画を実行した。お互いに一緒に生活することを望んでいるが、そのためにはどちらかが今の仕事を離れなければならない。

 読み易いストーリーで二人の心情が丁寧に描かれている。二人ともあまりにも「良い人」すぎるようにも読めるのだが、あまりうがった見方をしないで素直に読むのがよいと思う。