本の感想「必要最小限のルールで風景写真の傑作をものにする本」

本の感想「必要最小限のルールで風景写真の傑作をものにする本」村田一郎、山本純一(玄光社

 昨今気が付くことだが、長すぎるタイトルの本が多くなった。これもいささか限度を超えて長い。はっきりした目的があるのならば受け入れ難くはないのだが、そうでなければほどほどがいい。実はタイトルを見て風景写真の撮影の時に守るべきルール(とりわけ撮影マナー)を解説しているのだと思った。例えば私有地だと分かるところではそこに入らないようにするのは当たり前だけれど、道路わきから撮影する時などは、どこまでが立ち入っていいところなのか境界がよく分からないことがある。街中でスナップを撮影するのもルールがあるが、かつてとは同じではない。風景写真の撮影にも昔と違うルールがあるものだろう。というようなことを時々考えているがなかなか統一的な見解というものが見つからずにいた。そこでこの本を読んでみたのだが、求めていたことの回答はみつからなかった。だからがっかりしたということにはならず、両著者の作品を自身が解説するという分かり易い指南書になっている。実は、現役で働いていた時に、山本氏とは業務を通じて何度かお会いしたことがあった。同世代ということもあり、山本氏ご自身が大変気さくな方で、とても気持ちよく仕事を進めることができた。以来、写真展にもお伺いして最新の作品を拝見したり、ちょっとした立ち話を楽しんだりできたのは光栄であった。写真集はいずれも北海道新聞社から出している「カムイの大地」「カムイの生命」は素晴らしい。目を見張る作品は全て道内で撮影されたものだ。印刷もきれいでお買い得な写真集だ。山本氏がネイチャー・フォトを始めたきっかけはタンチョウの撮影からだったという。だから野生動物の撮影も積極的に取り組んでいる。風景写真と動物写真を両方とも高いレベルでこなす写真家は珍しい。

 こういった指南書の類をいくら読んでも、なかなか傑作をものにすることは叶わないのだけれども、撮影歴だけは長く、技量はいつまでもビギナーという私のような者には、こう語りかけている。「目的の被写体に出合えなくても、諦めずに現地に通い続けてください。通えば通うほどイメージが膨らみ、自らが求めている映像も明確に見えてきます。そして、いつしか自然の神様が必ず微笑んでくれる刻が訪れます。焦らず、諦めず、地道に一歩一歩が大切です。(中略)上手い写真、下手な写真という価値観から一歩踏み出すことを提案したいと思います。そんな想いを込めて、本書を世に送ります」

 また写真展でお会いしたいものだ。