本の感想「鳩護(はともり)」川﨑秋子

本の感想「鳩護(はともり)」川﨑秋子(徳間書店

 著者の作品は北海道の明治~昭和までの時代に生きた人々と野生とを描いたものを読んできた。この作品は現在の東京を舞台にしてある。主人公の女性はマスコミ関係の仕事をしている。ある時、住居のベランダに足環を付けた(ということは野生ではない)白いハトが飛来してきた。怪我をしているらしくしばらくの間、あずかることにした。ほどなく、近くの公園である男性と出会う。不思議なことにこの男は主人公が白いハトを飼っていることを知っていた。その男が言うことには、主人公は「鳩護」の役割を与えられたのだと。それはハトを守る役割であり具体的に何をするか求められてはいないが、ハトを包括的に守る役割なのだという。主人公はこの男性からその役目を引き継ぐことになったらしい。

 保護した白いハトには通信に使うための仕掛けがあったが、その中には白紙が入っていただけだった。伝書バトとして使われていたと推察された。主人公の周囲の人たちの関係者の中に、かつてハトと何らかの関りがあった人がいることが分ったりもする。また、夢の中では色々な状況でハトが登場し、何かを示唆しているようでもある。

 白いハトの設定がいささか無理仕立てのように思えて、これまで読んだ作者の作品と比べると読み応えはいまひとつだったと感じた。