本の感想「黄昏のために」北方謙三

本の感想「黄昏のために」北方謙三文藝春秋

 北方氏の作品は以前はしばしば読んだものだった。05年「水滸伝」全19巻、11年「楊令伝」全15巻、16年「大水滸伝」全51巻、24年「チンギズ紀」全17巻、でそれぞれに受賞歴がある。また、「三国志」全13巻、「史記 武帝紀」全7巻、など長編ばかりになってしまったのでなかなか読むきっかけがなくなっていた。本書は24年6月の新刊で初出は「オール讀物」で18作品の連作短編である。久しぶりに読んだ北方作品だった。物語の主人公はベテランの画家で、彼が遭遇する日常の出来事を描く。何か特別な「事件」が起こるわけではなく、主人公の内面を間接的に描き出していくような静かなストーリーである。