本の感想「黄金の騎士団」井上ひさし

本の感想「黄金の騎士団」井上ひさし講談社

 初出が1988年6月~1989年7月の「夕刊フジ」の連載で、未完の作品である。この本は620頁の長さがあるのでもう少しで完結するところだったのかもしれない。最後までストーリーを追えないのはとても残念だ。

 四谷にある私設の養護施設「若葉ホーム」の出身の主人公は大手企業に就職したものの、新人研修の途中で離職した。若葉ホームに戻ってみると、経営者は認知症になっていて、施設の経営は破綻しかかっていた。主人公は施設の存続のために尽力しようとする。まずは資金不足をどうにかしなければならないのだが、黄金の騎士団と名乗る謎の団体から少なからぬ額の寄付が寄せられる。主人公はこの団体の正体を探っていくと、この施設で生活している子供たちが何らかの事情を知っているらしいと気付く。驚いたことに、子供たちがニッケルや大豆の相場で大金を動かしていることが分かった。シカゴの相場師と連携して着実に資産を増やしていたのだ。子供たちはその資金であることを計画しているのだが、資金運用の中心人物は難病を抱えていて、余命はそれほど長くはない。物語は有力な政治家のスキャンダルを暴く画策を練っているところで中断となっている。これから佳境に入るというところなので未完なのはなんとも悔やまれる。