本の感想「ひみつのしつもん」岸田佐和子

本の感想「ひみつのしつもん」岸田佐和子(筑摩書房

 雑誌「筑摩」に連載したエッセイで2019年時点で18年刊継続しているそうだ。シリーズになっているので以前にも何冊かエッセイ集を読んでいる。初めの方を読んでいて、再読しているような気になったのだが、多分似たようなネタが以前よんだエッセイにも共通で出ていたらしい。この本自体は初読だと判断した。

 内容は妄想がどんどん広がっていくというもので、妄想のきっかけから展開の広がり具合がとてもユニークで面白い。強力な妄想力が発動してストーリーを紡いでいく。見事なものだと思う。

 どれでもいいのだが、ソムリエのエピソードはこんな具合。ボトルワインを数種類並べてそれぞれの説明をする。あまりに博学すぎると著者はいぶかる。もしかしてただ適当に思いついたことを話しているだけではないのか。その言葉巧みに騙されて、たとえどんなワインであってもソムリエが言った通りだと錯覚するだけではないのか。もしかするとグラスに注がれるのがワインでなくてただの水だったとしても、ソムリエの催眠術は有効なのではないか。と、妄想が語られる。読者は、少しだけそうかもしれないと思わされる。