本の感想「愛しのゴキブリ探訪記」柳澤静麿

本の感想「愛しのゴキブリ探訪記」柳澤静麿(ベル出版)

 著者は静岡県にある昆虫観察自然公園の職員でゴキブリストを自称する。この本はゴキブリの生態を詳しく紹介したものではなく、著者が昆虫観察や最終のために世界各地を探訪したルポルタージュである。昆虫採集をする人にとってはhow to本として使える。ゴキブリというと嫌われる昆虫のひとつであり、家の中で出てくるとたいていは駆除される。基本的には北海道の人家にはまだほとんどいない。この本では家の中に生息するゴキブリではなく、野外に生息する多くの種類を紹介してある。家のゴキブリとは随分と姿が違っていて多様性がある。現在見つかっているだけで世界では4600種類以上、日本では64種類いる。巻頭にはカラー写真が多く掲載されていて本書で紹介されている種類がほぼ網羅されている。野外の生物を研究対象にする人たちにはフィールド・ワークは必須であり、それを楽しめない人はそういう研究分野には進まないものだろう。夜間、深い森に入っていくのでそれなりに危険な目にも合うことがあるから誰にでもすぐに真似できることではない。実際にそういう体験をしない多くの人たちにとっては本書のようなものを通して、現場ではどういうことが行われているのか知ることになる。