本の感想「鐘」アイリス・マードック 丸谷才一 訳

本の感想「鐘」アイリス・マードック 丸谷才一 訳 (集英社ギャラリー世界の文学5 イギリス Ⅳ)1990_01

 作品は1958年の出版。解説によると本作はマードックの代表作で非常に高い評価を得ているとのこと。それなりの教養がないと読みこなさないように思った。

 作品の舞台になっているのがある信仰会で宗教施設として機能している。この信仰会に関わりのある人たちを描く。主人公のドーラは既婚者だが結婚生活が破綻しかけていて不倫の相手がいる。施設で中核となって働いているマイクルは同性愛者だが彼に思いを寄せる女性もいる。登場人物が様々な動きを見せるのだが、特に大きな事件は起こらずに物語は後半へ入っていく。すると、作品のタイトルになっている鐘が登場する。学生のトビーが湖で泳いでいて偶然に固定に沈んだ古い鐘を見つけた。そのことを知ったドーラはこの鐘を引き上げることを思いついてトビーをその計画に誘う。おりから隣接する僧院では新しい鐘を受け入れる式典を控えていた。その新しい鐘と引き上げた鐘を入れ替えようと大掛かりな悪戯を実行しようとする。ストーリーのクライマックスはこの計画がどうなるかということだが、そこに至るまでの導入部分が長すぎで読み難さを感じた。